矯正歯科治療に伴う歯根吸収は臨床上きわめて重大な問題である。矯正歯科治療中に生じる歯根吸収は治療を行った患者の86.4%に見られると報告されており、重症化すると歯の動揺をきたし、歯周組織が安定するまで治療中断や、治療計画の見直しを余儀なくされる場合もある。歯根吸収が発現する原因については、これまでにも多くの報告があり、全身的要因、歯の移動の力系、治療期間、年齢、歯根形態、歯槽骨の骨密度、口腔習癖などが検討されているものの、未だ明確な結論には至っていない。
当科では、開咬などの低機能歯、歯に対して繰り返し揺らされるような力(ジグリングフォース)、あるいは根尖部歯髄組織への伸展刺激が炎症性サイトカインの産生と破骨細胞誘導を促進し、歯根吸収が惹起されることを明らかとしてきた。さらに、矯正歯科治療時における歯根吸収を炎症と捉え、抗炎症剤の投与が歯根吸収に及ぼす効果の検討を行い、歯根吸収の予防、あるいは抑制が可能となるよう、研究を進めている。
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